歯科医学
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画像解析を応用した初期歯肉炎診査
伊津 元博神原 正樹
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2005 年 68 巻 1 号 p. 99-110

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抄録

歯肉炎の診査はこれまで主観的診査を中心に行われてきているため, 診査結果の信頼性・再現性・妥当性は高くないのが現状である.歯肉の客観的な診査方法を確立することは, 歯肉炎や歯周炎の予防に必要不可欠であり, 歯肉炎のリスク診断の予測精度を向上させることにつながる.本研究は, 2種類の歯肉デジタル画像を各々の解析方法で得られた定量値により, 初期歯肉炎の経日的変化を客観的に観察する目的で行った.23&acd;25歳の成人15名を被検者とし, 7日間歯口清掃の停止を指示した.歯口清掃停止1日, 2日, 3日, 5日, 7日後に口腔内診査を行い, 上顎右側中切歯歯肉の被検部位を改良CCDカメラ(41万画素)(コアフロント社製, 東京)とQuantitative Light-Induced Fluorescence (QLF)法の撮影条件下にてINSPEK-TOR PRO^<TM> (Inspektor Research Systems B. V.社製, オランダ)とを用いて撮影した.得られた口腔内写真のデジタル画像は, 画像解析ソフトIMAQ Vision Builder 6^[○!R](National Instruments社製, 米国)を用い, 歯肉の表面状態を定量化するとともに, デジタル画像上の明度比により歯肉の凹凸を視覚化した.また, QLFデジタル画像はQLF法画像解析ソフトInspektor Pro 1. 2. 0. 4^<TM>を用い, 歯肉の色調の強さを定量化し, 歯肉の変化について検討した.改良CCDカメラのデジタル画像により, 歯肉表面の凹凸を視覚化した結果, 歯肉の表面形態の経日的変化を定量化することができ, 歯肉炎症の広がりを3次元画像として視覚的に表現することができた.また, QLF法による画像解析により, 歯肉の赤色色調部分の経日的変化を定量化することができ, この値から初期歯肉炎の経日的変化は歯肉中央部から辺縁歯肉, さらに付着歯肉側へと広がることが明らかになった.

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© 2005 大阪歯科学会
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