歯科医学
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研究論文
三次元有限要素法を用いた下顎枝矢状分割術後の生体力学的解析
チタン製ミニプレートとu­-HA/PLLA複合体プレートの比較
本橋 具和森本 伊視正重 裕一濱田 裕之窪 寛仁大西 祐一角熊 雅彦中嶋 正博
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2018 年 81 巻 2 号 p. 65-73

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抄録

下顎枝矢状分割術は顎変形症に対する術式として幅広い適応症を有する優れた手術法として世界的に広く用いられている.骨切り後の骨片の固定には顎間固定の短縮,後戻りの防止目的にてミニプレートによる固定が行われている.近年,より強固な生体内吸収性骨接合材であるu­HA/PLLA 複合体プレートが開発され,臨床に用いられるようになった.今回われわれは下顎枝矢状分割術後にチタン製プレートとu­HA/PLLA 複合体プレートを骨接合材として用いることにより生じる応力について生体力学的解析を行い比較した.

CT 画像データから骨接合材としてチタン製プレートとu­HA/PLLA 複合体プレートを用いた下顎枝矢状分割術後1 か月のモデルを作成し,各モデルに咬合力および閉口筋筋力を付与し,近位骨片,遠位骨片,骨接合部および骨接合プレートにおける相当応力と遠位骨片の変位量を調べた.骨接合プレートにおける相当応力はチタン製プレートモデルの方が高かったが,応力の分布は同様であった.近位骨片,遠位骨片および骨接合部の応力の分布はともに下顎枝前縁の下端部に集中しており,u­HA/PLLA 複合体プレートモデルの方がやや応力は高かったがその差は軽微であり,骨接合材の種類の違いによる遠位骨片の変位量に差はなかった.

下顎枝矢状分割術後の骨接合材としてu­HA/PLLA 複合体プレートは,チタン製プレートに比べると物性強度はやや劣るが,除去の必要性がなく,骨片への応力や遠位骨片の変位量に差がないことより臨床的には有用であると考えられる.

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