2022 年 85 巻 1 号 p. 45-51
近年,患者の歯に対する審美的な要求は非常に高くなっており,「白くて綺麗な歯」を求める患者が多数いる.本研究では女性の笑顔における歯冠色の違いが歯学部学生の印象に及ぼす影響を,印象測定方法のひとつであるSemantic Differential Methodを用いて明らかにすることを目的とした.
調査対象者は,参加への同意が得られた大阪歯科大学歯学部学生38名(男性26名,女性12名,平均年齢25.1±3.7歳)とした.印象評価に用いた刺激画像は,成人女性10名(平均年齢27±1.5歳)の歯冠色をシェードガイド(Noritake Shade Guide, Kuraray Noritake Dental)のC4,A2およびNW0に画像処理した笑顔のそれぞれの平均顔とした.印象の測定方法は,刺激画像を1画像ずつランダムに調査対象者へ提示し,各画像から受ける印象を15種の形容詞対を用い,それぞれ7段階で評価させた.評定値が高いほどポジティブ,低いほどネガティブな印象であると定義した.その後,評定値の平均値をプロットしたSDプロフィールを作成し,各形容詞対でのC4,A2およびNW0の評定値を比較した.統計学的解析は各形容詞対においてFriedman検定を行い,有意となった場合,多重比較検定(Dann)を行った(α=0.05).(大歯医倫第111045号)
比較を行った結果,NW0では「積極的」「さわやか」「きちんとした」「明るい」「若々しい」といったポジティブな印象を多く受けるが,自然感や現実味に欠けるという印象を受けることも分かった.A2では「最も自然で現実的である」といった印象を受け,C4ではNW0およびA2と比較して多くの項目でネガティブな印象を受けることが分かった.以上のことから,女性の笑顔における歯冠色の違いは歯学部学生の印象に影響を及ぼすことが明らかとなった.