色材協会誌
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研究論文
塗膜の硬化過程における架橋密度の追跡手法
-貯蔵弾性率と架橋密度の比例性-
森 寛爾
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2013 年 86 巻 4 号 p. 123-127

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抄録
水酸基含有アクリル樹脂とイソシアネート硬化剤の混合物をモデル塗料として,140℃での硬化にともなう粘弾性変化を振り子式粘弾性測定装置で,反応率の変化をIR分析でそれぞれ測定した。その結果,相対貯蔵弾性率はS字型の変化を示し,イソシアネートと水酸基の反応は,初期の下に凸である部分では網目構造の生成とともに鎖延長反応にも費やされ,これに続く上に凸である部分では架橋生成のみに費やされると考えられた。このうち上に凸である部分では相対貯蔵弾性率とイソシアネートの反応率とは直線関係であった。このことから,塗膜の貯蔵弾性率は架橋密度に比例することがわかった。これはまた,振り子式粘弾性測定装置によって硬化中の架橋密度変化を実時間で観測できることも意味する。また架橋密度の増加に寄与しない反応が樹脂分子量から計算される理論値よりはるかに多いことがわかった。
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© 2013 一般社団法人 色材協会
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