2017 年 90 巻 4 号 p. 131-137
装置やデバイスの高精度化により,材料の熱膨張率制御の必要性が高まっている。近年,高性能な負の熱膨張率を有する材料(負熱膨張材料)が多数報告されている。負熱膨張材料は,複合体の第2相として使用すると,少量で効果的に母材の熱膨張を相殺できることから,複合体への応用が検討されている。負熱膨張材料は,発現機構によって(1)相転移に起因するもの(2)フレームワーク構造を有するもの,に分類される。負熱膨張材料をフィラーとした複合体が多数報告されており,その熱膨張率は,おおよそ複合則とTurnerの式で予測される値の中間の値を示すが,正確に予測することは困難である。このため,フィラーとマトリックスの界面の相互作用などの精密な議論が今後の課題とされている。