滑り運動下におけるぬくもり感の発現メカニズムを明らかにするため,10種の試料について触覚次元に基づく官能評価試験を行い,試料の物性値と得られた触覚因子との関係を系統的に解析した。その結果,ぬくもり感の認知においてはWarm感だけではなく,Soft感も関与している可能性が示された。Warm感は,試料の表面粗さが大きいと熱抵抗が増加,初期熱流束最大値(q-max)が減少することによって知覚されたものと考えられる。また,Soft感は試料の弾性率を示すヤング率とソフトマター表面を擦ったときの滑り出し過程における摩擦力の弾性項の寄与を示す摩擦パラメータksが小さいときに認知された。このことは,試料が縦方向に大きくひずみ,滑り出しから最大静摩擦までの摩擦力の増加が緩やかだとSoft感が知覚されることを示している。