金属フレークを含有する市販の金属調光沢塗料の欠点を克服するために,有機物質のみを利用して金属色を発現する塗料の創製が待望されている。近年,著者らの一人は,その候補となる可能性をもつ物質(過塩素酸イオンドープ3-メトキシチオフェンオリゴマー)とその塗料を開発したが,その溶媒は作業環境上望ましい溶媒ではなく,また光沢も低いものであった。ごく最近,特異な条件下で合成した塩化物イオンドープ3-メトキシチオフェンオリゴマーが水に易溶であり,かつ高い光沢をもつ金色調あるいはブロンズ調光沢塗膜を与えることが見いだされたので,その概要について述べる。具体的には,塗膜の光沢の要因が,オリゴマーが塗膜中で形成するエッジオンラメラ微結晶の大きな光学定数に帰されるといった学術的内容と,脱水処理により塗膜は水に不溶となり,社会実装の可能性が高まったことを示す工学的内容からなる。