2022 年 95 巻 11 号 p. 331-335
消化管癌は,消化管の内側に存在しており,消化管の外側からは位置の特定が不可能であるため,術前に内視鏡を用いて粘膜側からがん組織の近傍に滅菌処理した墨を局所投与し,がんの位置を特定できるようにする。しかしながら,墨は組織内を拡散しやすく,黒色で視認しにくい等の問題を有している。そこでわれわれは,四級アンモニウム基を有するポリカチオン含有組織接着性ポルフィリンを開発した。組織接着性ポルフィリンは,その分子中の多数の正電荷と生体分子中の負電荷との静電相互作用により,一週間程度,局注部位に残存し,赤色の蛍光を発する。本解説では,組織接着性ポルフィリンの組織マーキング剤としての特性に関してご紹介したい。