2023 年 79 巻 3.4 号 p. 181-186
2021年6月に本邦で保険承認されたペプチド受容体核医学内用療法(PRRT)である177Lu-oxodotreotide(ルタテラ®)の切除不能・再発神経内分泌腫瘍(NET)に対する有効性と安全性を評価した。全4症例が男性,平均年齢は60±12歳,NET-G2 4例,肝転移4例,腹腔内リンパ節転移1例で全例がStageⅣであった。PRRTは8週毎に実施し,計4コース施行できたのは2例,3コース,1コース施行がそれぞれ1例であった。1例では1コース投与後にGrade2の血小板減少を認め,2コース目を半量投与(3.7GBq)とした。奏効率は25%であり,PR 1例,SD 2例,PD 1例であり,PFS中央値は9ヵ月95%Cl(8-NA)であった。投与継続不能となる重大な有害事象は認めなかった。PRRTは切除不能・遠隔転移を有する神経内分泌腫瘍に対して,従来の治療法に比べ高い有効性と安全性が期待される。
消化器に発生する神経内分泌腫(neuroendocrine neoplasm:NEN)は,年間人口10万人に3~5人の新規患者が発生する比較的まれな腫瘍であるが,本邦における近年の疫学調査では増加傾向にある1)。近年提唱されたWHO腫瘍分類2019では組織学的に神経内分泌パターンを示す腫瘍を高分化と称し,Ki-67指数が<3%,3~20%の判定によりそれぞれ神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)G1,G2,G3と分類し,
形態学的に低分化な神経内分泌腫瘍でKi-67指数が20%を超える腫瘍を神経内分泌腫癌(neuroendocrine cancer:NEC)と分類している2)。一方,本邦においても2021年6月に放射性核種標識ペプチド治療(peptide receptor radionuclide therapy:PRRT)の一つであるルテチウムオキソドトレオチド(177Lu-oxodotreotide,ルタテラ®)がソマトスタチン受容体陽性NETに保険収載された。PRRTの膵NETや消化管NETに対する有効性は欧米において臨床試験により報告されている。そのため,日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)の膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドラインにおいてもソマトスタチン受容体(SSTR)陽性膵・消化管NETに対して二次治療以降の他剤無効例に対する代替治療としてPRRTが推奨されている3)。しかし,本邦において実臨床におけるPRRTの膵NETに対する有効性と安全性は不明である。今回われわれは切除不能・再発膵NETG2症例4例に対してPRRTを実施し,その有効性及び安全性について検討した。