神経眼科
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症例報告
蝶形骨洞扁平上皮癌により眼窩先端症候群をきたした1症例
橋村 朋戸成 匡宏池田 恒彦乾 崇樹廣瀬 善信
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2017 年 34 巻 3 号 p. 327-

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抄録

副鼻腔悪性腫瘍は上顎洞由来が最も多く,蝶形骨洞原発扁平上皮癌はまれである.蝶形骨洞原発扁平上皮癌による視神経症を報告する.症例は72歳,男性.頭痛および左眼視力低下で近医受診し後発白内障と診断され,YAGレーザーによる後嚢切開術を施行された.左眼の視力低下は術後も進行し,当科紹介となった.当院初診時,視力は右眼(1.2),左眼手動弁(矯正不能).左眼はRAPD陽性で,左眼瞼下垂および全方向の眼球運動障害を認め,臨床的に左側の眼窩先端部症候群を呈していた.造影MRIにて左篩骨洞を占拠する腫瘤を認め,海綿静脈洞から眼窩先端部に進展していた.耳鼻科にて生検を施行し扁平上皮癌と診断された.放射線療法を施行されたが,左眼は失明に陥った.しかし,左眼の眼球運動障害は放射線治療により著明に回復した.蝶形骨洞原発扁平上皮癌は無症状で経過し,海綿静脈洞から眼窩先端部に進展して,頭痛や視力障害などの症状で発症する.したがって,蝶形骨洞原発扁平上皮癌の初期症状の発見に眼科医が果たす役割が非常に重要である.RAPDの検出など,基本的な神経眼科的手技の重要性が再認識された.

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© 2017 日本神経眼科学会
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