神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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原著
難治性眼瞼痙攣患者に対する上眼瞼手術の影響
三村 治木村 亜紀子一色 佳彦
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2017 年 34 巻 4 号 p. 429-434

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抄録

背景:A型ボツリヌス毒素は眼瞼痙攣患者の治療の第一選択であるが,患者の約10%には十分な効果が得られない.上眼瞼の手術はこのような患者の追加治療である.
目的:難治性眼瞼痙攣患者に対する眼輪筋切除術とMüller筋縫縮術の併用の有効性を検証する.
方法:眼瞼痙攣に対して上眼瞼手術を行い,対象基準を満たした患者を診療録から後ろ向きに抽出した.BTX-A注射の頻度と毒素量を術前術後で比較し,再手術の頻度と初回と2回目の手術の間隔を評価した.有意差検定にはStudent’s t-test(p<0.01)を用いた.
結果:2002年から2016年までの間に63例126眼に眼輪筋切除術とMüller筋縫縮術を併施していた.BTX-A注射間隔は術前が12.6±3.9週で,術後は16.8±7.5週であった(p<0.001).術後も平均BTX-A注射量に変化はなかった.7例の患者が再手術を必要とし,初回から再手術までの期間は平均3.2年であった.
結論:Müller筋縫縮術を併施した眼輪筋切除術は難治性眼瞼痙攣へのBTX-Aの効果を増強させる.しかし,患者の10%は平均約3年で再手術を必要とする.上眼瞼手術はBTX-Aの注射間隔を延長させることに限定的な効果があり,手術はBTX-A注射を補完するものとみなすべきである.

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© 2017 日本神経眼科学会
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