神経眼科
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症例報告
網膜格子状変性に対する光凝固術後に出現したアディ瞳孔の一症例
黒川 歳雄小林 ルミ上田 直子林 紗葵大井 長和
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2018 年 35 巻 3 号 p. 324-329

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抄録

【目的】周辺部網膜変性に対する光凝固術後に近見障害を訴えアディ瞳孔と診断した一症例を報告し,臨床的評価を行うこと.
【症例】48歳男性,右利き,日本人.2017年X月Y日(第1病日)左眼の網膜格子状変性に対し光凝固術を受け,その後左眼の近見時の霧視を自覚し第12病日に再受診.矯正視力は両眼とも1.5.遠用眼鏡による近見視力は右0.6,左0.3pであった.調節力は右2.23D,左0.32D.明所瞳孔径:右3.0 mm左4.5 mm.左直接対光反射遅鈍,対光近見反応解離を示した.脳MRI・MRAに異常所見なし.0.125%ピロカルピン点眼試験では左明所瞳孔径点眼前4.5 mmが点眼後3.5 mmを認めた.
【結果】瞳孔不同及び対光近見反射解離,希釈ピロカルピンに対する過敏性といった所見によりAdie瞳孔と診断.瞳孔・調節障害はともに発症約3か月で改善を示したが,調節障害が瞳孔不同より早く改善した.
【考按】責任病巣は神経学的所見とピロカルピン点眼試験から節後性病変と考えられ,網膜光凝固による短毛様体神経の損傷と判断した.対光近見反射解離は毛様体筋につながる再生線維が瞳孔括約筋に異所結合したことによると考えた.限局部位における比較的低侵襲な照射においてもこのような合併症が起こり得ることが示唆された.

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© 2018 日本神経眼科学会
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