2018 年 35 巻 3 号 p. 330-336
眼症状を初発とし,精査中,治療開始後にクリーゼをきたした高齢者の全身型重症筋無力症(MG)2例の報告.症例1は左眼の眼瞼下垂,滑車神経麻痺にて発症した.AChR抗体陽性で,頸筋の筋力低下をきたし,全身型MGの診断にて,ピリドスチグミン臭化物内服開始となった.内服開始から3日目に呼吸困難をきたし,クリーゼを発症,救急外来受診し緊急入院となった.ステロイド療法,免疫抑制剤,免疫グロブリン静注療法,単純血漿交換療法で,全身症状,眼症状は改善した.症例2は両眼の眼瞼下垂,左眼の動眼神経不完全麻痺にて発症した.AChR抗体陽性で,waningが認められ,全身型MGと診断した.胸腺腫精査のため造影CTを施行したが,施行後から呼吸困難を訴え,クリーゼを発症した.ステロイド療法,免疫抑制剤,免疫グロブリン静注療法,単純血漿交換療法で,全身症状,眼症状は改善した.高齢者のMGは増加しており,高齢者の原因不明の眼瞼下垂や眼球運動障害を診た際には,常にMGを念頭に置かなければならない.MGは症状が急速に進行しクリーゼをきたす症例がある.またMG患者に造影剤を使用するときは,慎重に投与しなければならない.