神経眼科
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特別寄稿
病原性突然変異型ミトコンドリアDNAのマウス逆遺伝学
中田 和人
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ジャーナル 認証あり

2019 年 36 巻 2 号 p. 199-206

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抄録

 ミトコンドリアゲノム(mtDNA)に生じた特定の突然変異の病原性は,その変異型mtDNA分子種が組織や細胞に優位に蓄積した時にのみ,ミトコンドリア呼吸機能異常として誘導されることが知られている.近年,mtDNAに生じた病原性の欠失突然変異や点突然変異がミトコンドリア病,糖尿病,神経変性疾患,不妊症,がんなどの多様な病態群の原因だけでなく,老化にも寄与する可能性が示唆され,広く注目を集めている.このような多様なmtDNA関連疾患の病態発症機構を理解し,効果的な治療法を探索するためには,変異型mtDNA分子種を導入したモデル動物の作出と活用が最も有効な研究戦略となる.しかし,mtDNAは外膜と内膜に閉ざされたミトコンドリア内(マトリクス)に複数コピー存在するため,mtDNAにコードされた遺伝子の機能喪失や減弱は技術的に極めて困難である.このような状況の中,著者らは変異型mtDNA分子種を細胞質移植法によってマウス初期胚やマウスES細胞に導入することで,変異型mtDNA分子種を含有するモデルマウス群(ミトマウス)の作製に成功している.本稿では,変異型mtDNA分子種の病原性発揮機構と作出したミトマウスの表現型について解説したい.

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© 2019 日本神経眼科学会
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