神経眼科
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症例報告
強度近視を伴わない固定内斜視に対し,上外直筋結合術が有用であった一例
原田 優子後関 利明金田 和豊石川 均中崎 秀二
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2020 年 37 巻 2 号 p. 160-164

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抄録

 眼球・眼窩面積比を測定することで眼球容積と眼窩容積の不一致を確認することができた強度近視を伴わない固定内斜視に対し,片眼の上外直筋結合術が有用であった一例を経験したので報告する.

 症例は58歳,女性.20歳代に内斜視を発症し年々悪化を認めた.視力は右(1.2 ×-3.75D),左(0.6 ×-3.75D=C-1.00D Ax170°).眼位は遠見90 prism diopters(PD)内斜視20PD左下斜視,近見100PD内斜視25PD左下斜視であった.眼球運動は右眼正常,左眼内転・内下転以外は全方向で眼球運動制限を認めた.眼窩MRIにて左眼の外直筋の下方偏位,上直筋の鼻側偏位,外直筋-上直筋バンドの菲薄・破綻,筋円錐から脱臼する眼球を認めた.正常眼軸長であったが眼窩長は平均より短く,眼球・眼窩面積比も両眼とも平均より小さかった.左眼の上外直筋結合術と内直筋後転術を施行し,術後眼位は遠見10PD内斜視,近見6PD内斜位と改善した.

 本症例は強度近視を伴わず正常眼軸長だが,眼球容積と眼窩容積の不一致により固定内斜視を発症した可能性が示唆された.眼球・眼窩面積比の確認は強度近視を伴わない固定内斜視の診断の1つの指針として有用であり,治療法としても上外直筋結合術は有用であった.

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