神経眼科
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特集
眼球運動異常をやさしく診断するためのポイント
鈴木 康夫
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2021 年 38 巻 2 号 p. 124-132

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抄録

 眼球運動異常をやさしく評価するためのポイントをまとめた.

 ポイント1.正常眼球運動の5分類を知る.

 眼球運動は,両眼が同じ向きに動く4種類の共同性眼球運動と両眼が逆向きに動く非共同性眼球運動に分類される.

 分類の異なる眼球運動は,その発現信号,制御信号が眼球運動中枢の異なった神経回路で作成される.

 ポイント2.眼球運動末梢(脳神経核Ⅲ,Ⅳ,Ⅵとその神経・外眼筋)は,眼球運動の種類を区別しないので,最終共通経路と呼ばれる.

 眼窩軟組織には粘弾性があり,眼位は眼窩の弾性抵抗に拮抗する外眼筋持続収縮で保たれる.哺乳類の外眼筋の作用方向は半規管の適刺激方向にほぼ一致する.

 ポイント3.眼球運動中枢のしくみ(脳内の配置と機能)を理解し,異常眼球運動を種類と方向別に評価することで,局在診断が可能となる.

 ポイント4.非共同性眼球運動の輻湊信号は,中脳網様体から直接両側の動眼神経内直筋副核に投射するので,核間ニューロンを経由しない.輻湊障害で生じる複視は,水平眼位,固視眼依存性を示さない.

 ポイント5.頭部が自由に動かせる際の眼の動きは,視線運動であり,眼球運動+頭部運動である.複視や眼振がある患者が,正面視時に代償頭位をとることは稀ではない.

 甲状腺眼症では,垂直複視を伴う上転制限があっても,上方視に伴う自然な顎上げによって,複視を自覚していない事がある.

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