神経眼科
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症例報告
複視と羞明を訴えた外傷性視交叉症候群の一例
小町 祐子石川 弘清澤 源弘
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2021 年 38 巻 2 号 p. 179-183

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抄録

 我々は,複視と羞明を訴えた外傷性視交叉症候群(traumatic chiasmal syndrome: TCS)の1例を経験したので報告する.症例は40代男性.前頭部外傷による頭蓋底骨折にて両耳側半盲を発症した.4年後,運転時の複視と羞明を主訴に当院初診となった.視力は右(0.6),左(1.2).動的,静的視野ともに両耳側半盲を認めた.頭部画像にて下垂体部の異常を認めず,両耳側半盲は前交通動脈細枝の攣縮による視交叉部の虚血が原因と推察された.眼球運動には著明な制限を認めず近見は斜位を保っていたことから,複視は両耳側半盲よる融像不全に起因するhemifield slide現象と推定した.また,羞明は視交叉上核近傍の障害による羞明と考えられた.複視と羞明については融像訓練と遮光眼鏡の併用により,多少の改善がみられた.TCSに複視を訴え,さらに羞明を来した極めて稀な症例であった.

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© 2021 日本神経眼科学会
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