心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
症例
神経性食欲不振症に合併した若年女性発症のたこつぼ心筋症の1例
— 心エコーによる左心室壁運動の経時的観察
余川 順一郎多田 隼人井野 秀一藤野 陽川尻 剛照林 研至内山 勝晴舛田 英一今野 哲男坪川 俊成坂元 裕一郎山岸 正和
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 42 巻 12 号 p. 1627-1632

詳細
抄録
たこつぼ心筋症は, 閉経後の女性に発症頻度が多いことが知られているが, 今回, 著者らは神経性食欲不振症に合併した若年発症例を経験した. 症例は17歳, 女性. 神経性食欲不振症のため体重24.6kgまで減少し, 当院に入院中であった. 入院中の朝, 低血糖により意識障害およびショック状態となった. 心エコー図検査にて, 当初左心室での全周性壁運動の低下を認めた. また, 心電図では左軸偏位を伴うwide QRS波形を認めたが, 同日夕には広範囲のST上昇を認めた. この際の心エコー図検査では心基部の壁運動亢進, 心尖部・中隔の壁菲薄化と運動の低下を認め, たこつぼ心筋症に合致する所見であった. 人工呼吸管理, 大動脈内バルーンポンプ(intra aortic balloon pump; IABP)挿入, カテコラミン投与により全身状態管理を行ったところ, 次第に心電図所見は改善が得られ, 10日後には左室壁運動の正常化が得られた.
神経性食欲不振症に, たこつぼ心筋症を合併した報告は散見されるが, いずれも低血糖を契機に発症しており, 本例においても低血糖が契機となった. 一方, たこつぼ心筋症が閉経後の女性に多い理由としてエストロゲン濃度の低下が示唆されている. 本症例は神経性食欲不振症であり, 同様にエストロゲン濃度が低下していたと推察され, たこつぼ心筋症とエストロゲンの関与を考えるうえで興味深い.
著者関連情報
© 2010 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top