心臓
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症例
心膜液貯留をきたした後縦隔膿瘍が疑われた1例
尾崎 和幸矢部 正浩土田 圭一高橋 和義三井田 努小田 弘隆
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2010 年 42 巻 4 号 p. 511-516

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抄録

82歳,女性.前医にて感染巣不明の感染症に対し抗菌薬投与を施行するも,心膜液が急速に貯留し当科へ転院した.CTにて多量の心膜液,両側胸水,右腎盂腎炎と後縦隔に径4cm大の腫瘤を認めた.腫瘤は下大静脈と右心房に接し,周辺のみ造影効果があり,一部は下大静脈へ突出していた.当科入院当日に心膜穿刺を施行し,排出された心膜液は炎症性で,培養は陰性であった.ガリウムシンチグラフィでは上記腫瘤に一致した集積を認めた.また,血液培養からE. coliおよびBacteroides fragilisが検出された.シプロフロキサシン,クリンダマイシンを投与し,血栓の関与を疑いヘパリン投与を併用し,炎症反応は陰性化した.6カ月後にCTを再検し,腫瘤消失を確認した.臨床経過より後縦隔の腫瘤は膿瘍と考えられた.稀な症例と思われここに報告する.

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© 2010 公益財団法人 日本心臓財団
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