2012 年 44 巻 SUPPL.2 号 p. S2_63
発端者は19歳,男性.午前8時にランニング中に突然倒れ救急隊到着時に心室細動(VF)が確認され,除細動を繰り返されたが死亡した.剖検で器質的心疾患なく遺伝子解析でSCN5A mutation(R1193Q polymorphism)を認めた.突然死の2カ月前の心電図でQT延長はなかったが,早期再分極(V4~6のJ波)を認めた.症例の弟(14歳)と父(49歳)にも同様の遺伝子異常を認め,父の心電図では下壁誘導,左側胸部誘導にJ波を認めた.弟の心電図では早期再分極はみられずQTc=0.45と延長を認めたが,運動負荷試験での有意なQT延長はなかった.また,父と弟は加算平均心電図で心室遅延電位は陰性,plisicainaide負荷試験で有意なST上昇はみられず,24時間Holter心電図での心室性不整脈はみられなかった.若年突然死例の家族に同一のSCN5A遺伝子異常を有しながら,心電図で早期再分極とQT延長が混在したまれな一家系であると考えられた.