心臓
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[症例]
複数の要因がTorsade de Pointes発症に関与した高齢者QT延長症候群の1例 ─ポリファーマシーの問題も含めて
髙原 宏之岩田 幸代武居 明日美鄧 皓之白木 宏明吉岡 隆之谷口 弥生平山 園子小澤 徹井上 信孝
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2017 年 49 巻 10 号 p. 1076-1082

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抄録

 症例は88歳女性で,慢性的な肩こり症状と胃部不快感に対して葛根湯とファモチジンを常時内服していた.主訴は失神・痙攣.約2カ月前から同主訴にて他院に入院となり,完全房室ブロック・QT延長および低K血症を認められ,低K血症の補正とプロパフェノン内服中止にて症状が改善し同院退院となった.しかし,失神を伴う痙攣が再発するため当院へ救急搬送となった.入院時,胸部単純X線写真上肺うっ血・心拡大を認め,心電図では高度房室ブロックとQT延長(QTc 580 ms)を認めた.入院後,頻発する心室期外収縮を契機とするTorsade de Pointes(TdP)が捉えられた.K 3.6 mEq/L,Mg 1.73 mg/dLと低K血症,低Mg血症を認め,TdPに影響した薬としてファモチジン・甘草の関与が疑われた.緊急ペーシングを行い電解質補正,同薬中止により第2病日以後PVCの著減,TdPの消失を認めた.QTcは改善傾向にあったが,その後第8病日まで500 msと延長は遷延していた.第8病日,完全房室ブロックに対しペースメーカ移植術を行い,現在まで症状なく経過されている.QT延長の素因が疑われる高齢女性のTdP発症に,薬による電解質異常,徐脈,加齢の生理的変化など複数の要因が関与したと考えられる.高齢化社会の医療問題のひとつであるポリファーマシーの重要性を示す教訓的な症例であり,ここに報告する.

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