2018 年 50 巻 8 号 p. 902-907
症例は60歳,男性.幼少期にMarfan症候群と診断され,25歳時にStanford Aの急性大動脈解離に対してCabrol手術を施行された.6年前に施行したCTでgraftと両側冠動脈の吻合部狭窄を指摘されたが無症候であり経過観察となった.半年前より労作時呼吸困難を自覚,うっ血性心不全を発症し入院となった.心不全の治療後に冠動脈造影検査を施行し,graftと両側冠動脈の吻合部に99%狭窄を認めた.graftが胸骨の後面に位置していること等から再開胸術による危険性を考慮し,段階的に経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行する方針となった.最終的には両側冠動脈の吻合部へそれぞれ3.5×14 mmのバイオリムス溶出性ステントを留置し,良好に開大した.Cabrol graftと両側冠動脈の吻合部狭窄に対する待機的PCIの報告はなく,文献的考察を交えて報告する.