心臓
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[症例]
HER2陽性乳癌に対するペルツズマブ投与後に急性左心不全を呈した1例
菊地 進之介森田 有紀子漢那 雅彦出島 徹中山 未奈岡島 裕一日比 潔木村 一雄田村 功一
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2018 年 50 巻 8 号 p. 934-940

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抄録

 症例は64歳女性.2011年に右乳房腫瘤を自覚し,2013年5月に病変部より出血を認め,当院外科受診となった.HER2陽性の右乳癌の診断で6月より化学療法が開始された.抗HER2薬トラスツズマブやアントラサイクリン系薬剤に対する反応が悪く,2014年3月にトラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセルが開始されたが,13日後に呼吸困難を自覚し,急性左心不全の診断で当科緊急入院となった.心臓超音波検査では左室駆出率20%と,び漫性の壁運動低下を認めた.心不全加療に伴い徐々に壁運動は改善し,心不全代償後に心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影では左前下行枝#6の完全閉塞,右冠動脈からの側副血行路を認め,左室造影では前壁の壁運動は低下していたが,左室駆出率48.8%と左室機能は改善していた.心筋虚血による一時的左室機能低下に加え,ペルツズマブによる心毒性が左室機能不全の誘因となった可能性が疑われた.ペルツズマブはHER2陽性乳癌に対する新しい分子標的薬である.本症例では,高齢,高血圧,糖尿病,虚血性心疾患,化学療法の既往などの患者背景が,左室機能不全のリスクを増加させた可能性がある.癌化学療法による心毒性は,頻度は低いが重篤になる可能性があり,若干の文献的考察を含め報告する.

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