2020 年 52 巻 2 号 p. 128-135
背景:2018年の診療報酬改定により末期心不全患者に対する緩和ケアが保険適用となった.厚生労働省は心不全患者に対する緩和ケアを推進するにあたり「既存の緩和ケアチームと心不全多職種チームが連携し,心不全多職種緩和ケアチームとして協働する」必要性を指摘しているが,慢性心不全看護認定看護師(CHFNCN)と緩和ケア認定看護師(PCCN)の配置,活動についての実態は不明である.
方法:日本循環器学会の循環器専門医研修施設1004施設に対して実施した「心不全患者に対する緩和ケアについてのアンケート調査」の結果をもとに心不全患者に対する緩和ケアに対する取り組み,考え方への影響をCHFNCNとPCCNの有無で分析した.
結果:解析対象539施設において両認定看護師をいずれも配置していたのは115施設(21.3%),CHFNCNのみ配置していた31施設(5.8%),PCCNのみ配置していた249施設(46.2%),いずれも配置されていなかった施設は144施設(26.7%)であった.緩和ケアを行う必要性のある症状について,両認定看護師非配置施設をリファレンスとした多変量解析では,CHFNCN配置施設では呼吸困難の選択が有意に低く,倦怠感,疼痛,不安,抑うつの選択が有意に高かった.何を協議しているかについてはCHFNCN配置施設で「療養環境・社会的支援」が有意に選択され,緩和ケアの障害については「診療報酬が算定されない」が有意に選択された.一方,CHFNCN,PCCN配置施設ともに「家族に説明後,患者・家族の両者に説明」が多く,「強心薬の離脱が困難」,「食事摂取が困難」,「意識レベルの低下」が認められる「最期が近くなった時」に介入していた.また,心不全緩和チームとがん緩和ケアの両チームが存在した22施設中,定期的にカンファレンスを行っている施設は1施設のみであった.
結論:両認定看護師の注目する内容は異なっている部分もあるが,介入を行うのは最期が近くなった時になっている状況は同じであった.心不全とがん緩和ケアチーム間の連携の困難さも浮き彫りになった.