心臓
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[症例]
ウイルス感染を契機に術後出血をきたした,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を伴った大動脈弁置換・冠動脈バイパス術の1例
神吉 和重藤井 明
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2020 年 52 巻 4 号 p. 453-457

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抄録

 特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura;ITP)を合併した大動脈弁狭窄症,狭心症の82歳男性に対し,大動脈弁置換術・冠動脈バイパス術を施行した.術前の血小板数は5×104/mm3前後で推移していたが,術前日に濃厚血小板20単位を輸血し,6.2×104/mm3として手術を行った.人工心肺離脱後に濃厚血小板20単位を輸血し,術直後の血小板数は9.5×104/mm3であった.術後6日目にA型インフルエンザを発症し,血小板数が0.9×104/mm3と急激に低下して胸腔内出血をきたした.濃厚血小板輸血,ガンマグロブリン大量静注療法,副腎皮質ステロイドの内服によって血小板が増加し,出血はコントロールされた.ITPを合併した開心術に対する周術期管理では,術後の血小板減少から出血合併症をきたす可能性があるため,術前から十分な対策を施しておくことが肝要であると考えられた.

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