心臓
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[症例]
生体弁による大動脈弁置換術後に血栓弁をきたし,抗凝固療法で改善した1例
辻本 貴紀山田 章貴顔 邦男麻田 達郎
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2020 年 52 巻 5 号 p. 517-520

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抄録

 今回我々は,生体弁による大動脈弁置換術後早期に血栓弁をきたした症例を経験したので報告する.症例は73歳の男性,重症大動脈弁狭窄症の診断で,大動脈弁置換術(CEP Magna EASE 21 mm)を施行した.術後出血傾向のため,抗凝固療法を施行せず術後23日目に独歩退院となったが,術後36日目に増悪する呼吸困難および心房粗動を認めたため,再入院となった.再入院時の経食道心エコー図検査で,心嚢液貯留および大動脈弁位生体弁の弁尖肥厚を認め,感染徴候なく血栓弁と診断した.薬物的除細動および心嚢ドレナージにより,症状は改善した.血栓弁に対しては,心不全症状もなく,塞栓症を認めなかったので抗凝固療法を行い,保存的に加療したところ,3週間後の経食道心エコー図検査では人工弁の肥厚は消失し,再入院22日目に退院となった.生体弁による大動脈弁置換術後の血栓弁は比較的頻度が少ないが,抗凝固療法を施行していない症例では,とりわけ術後早期は発作性心房細動などの合併症のため血栓弁をきたす危険があると思われた.また今回のように早期に血栓弁の診断ができた場合,抗凝固療法の再開のみで治癒できる可能性が示唆された.

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