2022 年 54 巻 10 号 p. 1154-1160
43歳,女性.自宅内で卒倒し,救急要請された.初期波形は心室細動であり,一度の直流除細動で洞調律に復帰し,前医へ救急搬送された.緊急冠動脈造影検査で両側冠動脈に有意狭窄を認めず,左室造影検査で心尖部に無収縮を認めた.翌日以降の心電図でV2からV6誘導に巨大陰性T波を認め,たこつぼ型心筋症と診断された.入院後は良好に経過し,後日施行した冠動脈アセチルコリン負荷試験で,右冠動脈アセチルコリン20 μgの負荷で陽性,冠攣縮性狭心症の診断となり,心室細動の原因と推測された.約1カ月後,植込み型除細動器導入のため当院に紹介となった.皮下植込み型除細動器を選択し,術前の運動負荷心電図検査を施行したところ,陰性T波が検出された.除細動器移植の前後でT波の形態が変化した場合,誤作動リスクとなる可能性を考慮した.3カ月間着用型除細動器を使用し,その後の運動負荷心電図検査で陰性T波が改善したことを確認して皮下植込み型除細動器の移植を実施した.以降も良好に経過している.
本症例におけるたこつぼ型心筋症のような,一過性の心電図変化を呈する皮下植込み型除細動器待機症例に対し着用型除細動器は有用と考えられ,当院における着用型除細動器の使用実績を踏まえて報告する.