心臓
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[症例]
心原性ショックを呈したカルシウム拮抗薬中毒の1例
松繁 玄曉宮原 克徳山口 聡美遠藤 豊宏諸國 元太郎西本 隆史森本 芳正山中 俊明井田 潤柚木 佳岡 岳文
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2023 年 55 巻 3 号 p. 256-260

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抄録

 症例は40歳代女性.6時間続く胸腹部痛を主訴に当院に救急搬送された.来院時はやや不穏状態であり,頻呼吸と低血圧を認めた.心臓超音波・心電図検査にて,心機能低下と房室伝導障害を認めたがST-T変化はなく,血液検査でも心筋逸脱酵素・トロポニンTは陰性であった.単純CTにて膵腫大と周囲の脂肪織濃度上昇を認め,膵炎の疑いにてICU入室とした.高用量のカテコラミン投与と補液を行うも低血圧が遷延し,動脈血ガス分析にて循環不全の増悪を認め,心臓超音波検査でもさらなる心機能低下と房室伝導障害を認めた.本人・家族に繰り返し問診を行ったところ,カルシウム拮抗薬を大量服薬したことを聴取し,塩化カルシウムとインスリン持続静注を開始したところ,血行動態の安定化と末梢循環の改善を得た.今回,診断と治療に難渋したカルシウム拮抗薬中毒の1例を経験したので報告する.

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