抄録
低酸素下の心筋に対するhypercapnea(pH=6.80)の影響を新生仔と成獣の家兎の摘出心を用いて調べた.心筋は37℃で動脈灌流し,90回/分で電気刺激した.張力の変化,心筋の組織adenosi熱etri、phosphate(ATP),creatine phosphate(CP)そして,心筋からの流出液のcreatine kinase(CK)を測定した.新生仔,成獣とも20分間の低酸素症では,低pH群(hypercapnea,pH=6.8)はコントロール群(pH=7.40)に比較して発生張力は有意に低下したが,両群とも新生仔の方が成獣より張力は大きかった.30分間の再酸素化で,成獣は発生張力および,組織ATPは低pH群の方がコントロール群より有意に増加し,流出液中のCKの値も低かった.一方,新生仔では成獣のような低pH群の効果は示さなかった.また,成獣の低pH群では低酸素下および再酸素下中の静止張力の上昇は抑制されたが,新生仔では抑制されなかった.以上より,低酸素下でのhypercapneaでは,発生張力は抑制されるが,新生仔心筋の方がその効果は少ない.また,成獣では,hypercapneaは低酸素症による心筋の傷害を軽減させる効果があるが,新生仔では認めなかった.新生仔心筋は成獣よりもasphyxiaに耐性があることが示された.