心臓
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研究会 第22回 理論心電図研究会 心室細胞閾値をめぐる諸問題 電気的心室細動閾値測定法の問題点
杉本 恒明
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1988 年 20 巻 6 号 p. 753-758

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抄録

心室細動閾値は旧くから,単一パルス刺激法によって測定されてきた.これは単一のパルス刺激を心室興奮の細動受攻期に加えて心室細動を生じる時の電流の強さを測定するものである.後にトレインパルスを細動受攻期の範囲に加える方法が工夫され,今日は専らこの方法が用いられている.この両者は,心室興奮の不応期近くで,ある広がりの心筋を同時に刺激することにより,局所的な反復性リエントリーを生じさせることを機序とすると思われる.このような局所的な興奮が心室細胞に至るまでには4つのstageがある.Stage 1は局所的な反復性リエントリーの発生であり,これが周辺に伝導して心室興奮を生じるのがstage 2,興奮が連続して頻拍となるのがstage 3,そして,頻拍が続く間にリエントリーが多発して心室細動に至るまでをstage 4とする.こうしてみると,単一パルス刺激法は4つのstage全体を含む心室細動閾値を測定していることになる.著者はトレインパルスを数秒間持続させ心室細動を生じる時の電流の強さを測定する方法を持続刺激法,心室期外収縮が連続して続くように単一のパルスを加え,細動に至る時の期外収縮数で閾値を表わす方法を連続刺激法と呼んでいるが,持続刺激法はstage 2からあとの,連続刺激法はstage 3からあとの細動受攻性を評価することになる.
心室細動閾値といっても,測定法によってみている内容はかなり異なること,また,逆に心室細動受攻性はこうしたいくつかの測定法による細動閾値を総合して判定するという見方もあると考える.

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