抄録
肺動脈病変を初発所見とし,発症7年目より在宅酸素療法を行い,これが肺高愈圧の進展防止に有用であったと思われた高安動脈炎の1例を経験した.
症例は,50歳の女性.労作時の呼吸困難を主訴として入院.第1回目入院時(41歳の時),両中下の肺動脈の閉塞を認め,また肺動脈平均圧は26mmHgと軽度の肺高血圧を認めた.第2回目入院時(47歳の時)には,肺動脈造影にて軽度の肺動脈病変の進行を認め,肺動脈平均圧も36mmHgと上昇していた.第3回目入院時(48歳の時)には,肺動脈平均圧は54mmHgとさらに上昇を認めたが,鼻腔より3l/分の酸素投与にて肺動脈平均圧は54→40mmHgと低下した.このため以後在宅酸素療法を開始したが,本療法施行後約2年6カ月後に再度肺動脈圧を測定したところその平均圧は54→60mmHgと軽度の上昇に留まり,鼻腔よりの3l/分の酸素投与で肺動脈平均圧は60→50mmHgと低下した.本症例の経験から,高度の肺動脈病変を伴う高安動脈炎患者に対して,定期的に肺動脈圧を測定し,酸素投与に反応して肺動脈圧が低下するものでは,在宅酸素療法を行うことが肺性心への進展予防や運動能の改善に有効であることが考えられた.