心臓
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症例 多源性持続性心室頻拍を呈し不整脈死と診断された高齢者の心サルコイドーシスの1剖検例
池田 隆徳杉 薫円城寺 由久山下 一弘西脇 博一安部 良治二宮 健次矢吹 壮町井 潔高橋 啓直江 史郎
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1992 年 24 巻 7 号 p. 840-846

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抄録
症例は82歳男性で,主訴は動悸.持続性心室頻拍(VT)と診断され,過去2回の心臓電気生理学的検査で,disopyramide 400mg/日とaprindine 40mg/日の併用投与が有効とされ,投与を受けていた.その後症状なく経過していたが,再びVTによる動悸発作が出現するようになり,入院となった.これまでの頻拍中の12誘導心電図のQRS形態を比較したところ,4種類のVTが認められ,その起源は左室側壁,前側壁,側壁基部および右室中隔と推定された.心エコー図では左室の軽度のび漫性壁運動障害が認められたが,左室駆出分画は58%と比較的良好であり,明らかな器質的心疾患を疑わせる所見は認められなかった.これまでVTはいずれもdisopyramide 100mgの静注で停止されていたが,入院後しだいにdisopyramideに抵抗性を示すようになり,また直流通電に対しても抵抗性を示すようになったため,VTを抑制する目的で右室からの一時ペーシングを試みた.しかし,閾値が異常に高くペーシングに対して心筋が反応しなくなり,VTによる血行動態の悪化で死亡した.剖検では心筋層と肺門部リンパ節内にラングハンス型巨細胞を混ずる肉芽腫の形成が認められ,サルコイドーシスと診断された.本症例のごとく,高齢者で明らかにQRS形態の異なる4種類の持続性VTを呈し,心サルコイドーシスと診断された症例はまれと考えられ報告した.
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