心臓
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症例 高拍出性心不全から低拍出性心不全へ移行し,多臓器不全を合併した衝心脚気の1例
横手 秀行友渕 佳明松谷 良清大鹿 裕之前田 浩伊良波 浩後藤 融平広岡 紀之田中 陽一篠崎 正博佐谷 修上野 雄二西尾 一郎
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1994 年 26 巻 5 号 p. 546-552

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抄録

症例は50歳,男性.極めて不規則な食生活とアルコール多量摂取の既往があり,下腿浮腫,呼吸困難が出現しショックに陥り入院した.入院時,ショック状態に加え,著明なアシドーシス,右心不全を認めたが,肺動脈拡張期圧の上昇はなく,末梢血管抵抗は低値,心係数は高値を示し,高拍出状態であった.心エコーでも左室収縮能は保たれていた.衝心脚気を疑い大量のカテコールアミンとビタミンB1を投与し,末梢血管抵抗上昇に伴いショック状態を離脱した.後日,入院時の血中ビタミンB濃度の著明な低値が確認された.しかし,第3病日に末梢血管抵抗の上昇に伴い心係数の低下,肺動脈拡張期圧の上昇を認め,心エコーでも左室の収縮能の低下を認めた.高拍出性心不全から低拍出性心不全に病態が変化し,多臓器不全も合併し,重篤な状態となったが救命し得た.
衝心脚気では迅速な診断と治療が大切である.さらに,その治療中,末梢血管抵抗の上昇により高拍出性心不全から低拍出性心不全に病態が変化した衝心脚気の1例を経験したので報告する.

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