抄録
家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体に対する薬物療法が,虚血性心疾患(IHD)の一次予防と二次予防に効果があるかを検討した.新潟県下9施設のFHヘテロ接合体37例(男性18例,女性19例,平均年齢52.1±11.3歳)を対象とした.IHD合併の有無により患者を一次予防群(I群:n=20例)と二次予防群(II群:n=17例)に分け,IHDの新規発症および症状の悪化と総コレステロール(TC)のコントロール状態との関係を調べた.平均観察期間は6.0±2.0年であった.全患者のTCは,治療後23.6%低下し(329±12mg/dl→255±10mg/dl;平均±SE,p<0.001)LDLコレステロールも23.1%低下した(251±12mg/dl→193±9mg/dl,p < 0 .001) . 37例中13例( 35.1 % :I 群7 例, II群6例)でTC値が220mg/dl以下にコントロールされ,IHDの新規発症や症状の悪化は認めなかった.治療によりTCが正常域にコントロールできなかった患者では,I群13例中2例にIHDが新規に発症しII群11例中2例で症状が悪化した.TCのコントロールが不良だった患者では,投与薬剤のコンプライアンス不良と薬剤の投与量不足が多い傾向を認めた.以上よりFHヘテロ接合体に対する薬物療法は,TCを220mg/dl以下の正常域まで低下させればIHDの一次予防および二次予防に効果があることが示唆された.TCコントロール不良群には,薬物療法の強化やLDLアフェレーシスの併用が望まれる.