1995 年 27 巻 3 号 p. 202-206
加齢により左室拡張早期充満が低下することが知られているが,拡張早期充満を規定する1つの因子である等容弛緩能が加齢により低下するかについては不明である.この問題について,カテ先マノメーターで左室圧を記録し,冠動脈造影,左室造影で正常であった38例(年齢20~77歳)を対象に,左室弛緩能の指標としての左室等容弛緩期圧降下の時定数(T)を求め,加齢との関係を検討した.左室収縮末期容積係数,駆出率の収縮機能は加齢により変化しなかった.2方法で求めたTはいずれも加齢によりほとんど変化せず,また,Tに関与する拡張末期圧,心拍数,壁厚は加齢により有意な変化を認めなかった.この成績は成人後の20歳代から70歳代までは,左室弛緩能はほぼ不変であることが示された.従来より知られている加齢による左室拡張早期充満の低下には弛緩能は直接関与していないものと推測された.