心臓
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総説 中心動脈伸展性の加齢変化に及ぼす運動の効果
松田 光生
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2002 年 34 巻 11 号 p. 841-849

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抄録

動脈壁の器質的あるいは機能的な加齢変化に伴って,中心動脈の伸展性は低下し,収縮期高血圧や脈圧増大がもたらされる.収縮期高血圧や脈圧増大は,心血管疾患や脳卒中の独立した危険因子であることが知られている.また,中心動脈伸展性の低下は,高齢者における循環機能や運動機能の障害の原因にもなる.横断的検討では,スポーツ競技者の中心動脈伸展性は大きく,また,一般の健常者のみならず動脈硬化危険因子の保有者においても,日常の身体活動量が多いと加齢に伴う中心動脈伸展性の低下は抑制されていることが示された.さらに,比較的短期間の持久的運動トレーニングが中心動脈伸展性を増大する効果を有することも示されている.すなわち,運動は動脈壁における器質的ないし機能的な加齢変化の進行を抑制する効果を有するものと考えられる.その機序に関する知見も報告されているが,中高齢者における収縮期高血圧症罹患率を低下させ,また,循環機能や運動機能を向上するための適切な運動量や強度の検討と合わせて,さらに研究を重ねることが必要と思われる.

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