植物環境工学
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論文
ナスの果皮組織にみられるアントシアニン色素と光環境との関係
梅田 知季宮崎 肇山本 愛彌冨 道男山口 雅篤松添 直隆
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2006 年 18 巻 3 号 p. 193-199

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抄録

ナス(Solanum melongena L.)果皮の色素細胞の分布およびアントシアニンの存在様式と果実の光環境との関係を調べるために,暗黒処理を施した果実を顕微鏡で観察した.ナス果実の着色と光環境との関係は品種・系統間で異なり,果実に暗黒処理を行うと全く着色しない光感受型,着色への影響が少ない非光感受型,着色は低下するがある程度の着色がみられる中間型の3タイプに分類できた.光感受型の品種では,対照区(無被覆)で果皮に色素細胞がみられたが,暗黒区では全くみられなかった.非光感受型の品種では対照区,暗黒区とも色素細胞がみられた.中間型の品種では,対照区で色素細胞がみられたが,暗黒区では色素細胞と全く着色がみられない細胞が混在していた.このことから,光感受型では全ての細胞,中間型では一部の細胞において,アントシアニン生成経路に光が必要であることが明らかになった.従って,ナスの果色は,細胞内のアントシアニン量と果皮組織の色素細胞の分布(密度)量に影響すると考えられた.
果皮の色素細胞中のアントシアニン様液胞内含有物(AVIs)は主要色素がナスニン(delphinidin 3 -p-coumaroylrhamnosylglucoside-5-glucoside)である品種・系統に特異的に観察された.また,AVIsの存在は果色に大きく影響することが示された.

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© 2006 日本植物工場学会
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