植物環境工学
Online ISSN : 1880-3563
Print ISSN : 1880-2028
ISSN-L : 1880-2028
論文
シアナミド剤散布が‘カワヅザクラ’(Prunus lannesiana Wils. ‘Kawazu-zakura’)の花芽発達および花の形質に及ぼす影響
松田 健太郎山際 豊武藤 浩志馬場 富二夫稲葉 善太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 30 巻 3 号 p. 156-164

詳細
抄録

‘カワヅザクラ’の観光利用と切り枝としての活用のため,南伊豆町青野川堤防に植栽されている‘カワヅザクラ’の開花と気温の関係,およびシアナミド散布による開花促進効果について調査した.2011年と2012年の開花時期をみると,2011年の2分咲きが2月16日,5分咲きが2月21日,満開が3月2日であり,2012年は2分咲きが2月23日,5分咲きが2月26日,満開が3月9日と,5~7日の違いがあった.花芽発達過程の芽が割れて緑色が見える状態から開花までの日平均気温の積算は,両年とも234~259 ℃・日の範囲内であり,ほぼ同じであった.一方,花芽発達開始前である11月上中旬の旬平均気温は,2012年が2011年より2.6~3.8 ℃高く,‘カワヅザクラ’の開花期の早晩には,花芽発達開始後の気温だけでなく,自発休眠覚醒期間中の気温が大きく影響していることが示唆された.また,シアナミド剤を散布後に枝を切り,恒温室に搬入したところ,無処理区よりも5,10および15 ℃でそれぞれ35,32および19日,花芽の動き出しが早まった.しかし,花芽の発育速度に違いはみられなかった.このことから,シアナミド剤散布による開花促進効果は,主に花芽の動き出しが早まることによるものであることが明らかになった.加えて,花の形質について検討した結果,シアナミド剤の散布による花径および花色への影響は認められなかった.

著者関連情報
© 2018 日本生物環境工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top