日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第57回日本小腸学会学術集会
セッションID: S2-5
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主題セッション2 難治性小腸疾患の診断と治療
重症大動脈弁狭窄症患者における消化管出血の現状と対策
*井上 健杉野 敏志廣瀬 亮平土肥 統吉田 直久鎌田 和浩全 完内山 和彦石川 剛高木 智久小西 英幸内藤 裕二伊藤 義人
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抄録

【目的】 重症大動脈弁狭窄症患者(以下AS)に合併した消化管出血はHeyde症候群と定義され、近年では、消化管angiodysplasia(以下AD)とVon Willebrand因子の質的異常を合併する疾患とされるが知見は限られている。近年、重症ASに対して低侵襲な経カテーテル大動脈弁留置術(以下TAVI)が開発された。本研究ではTAVIを施行した重症ASを対象とし、Heyde症候群の現状とTAVI施行前後での病態の変化について明らかにする。

【方法】 単施設にて後ろ向き検討を行った。2016年4月~19年1月の間に当院にてTAVIを施行した患者を対象とした。TAVI施行前のHb値、内視鏡施行頻度、検査施行症例における活動性消化管出血・消化管ADの頻度などを検討項目とした。またTAVI施行後6ヶ月を経過した症例において、Hb値、消化管出血の頻度などを検討項目とした。

【結果】 対象は178例、男性/女性;47/129例、平均年齢86歳、Hb中央値(範囲)は10.8(5.5-15.7)g/dlであり、96例(54%)に貧血を認めた。抗血栓薬を内服していた症例は、抗血小板剤43%(76/178)(Low-dose aspirin 38%(67/178)、Thienopyridine 21%(37/178))、DOAC 20%(36/178)、Warfarin 5%(9/178)であった。40例(23%)に上部内視鏡が施行され、7例に活動性出血を、4例にADを認めた。23例(13%)に大腸内視鏡が施行され、3例に活動性出血を、5例にAD認めた。3例(1.7%)にバルーン小腸内視鏡が施行され、2例にADを認めAPCによる凝固処置が施行された。TAVI施行前に貧血を有しTAVI施行後6ヶ月以上経過観察しえた症例は52例において、平均Hb値はTAVI前9.0g/dlからTAVI後10.7g/dlへと有意に上昇を認めた(p < 0.0001)。

【結論】 重症ASにおいて約半数で貧血を認めた。内視鏡検査が施行されたのは2割程度であったが、比較的高い頻度で消化管ADを認めた。TAVI施行により有意に貧血の改善を認めた。

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© 2019 本論文著者
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