日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第58回日本小腸学会学術集会
セッションID: O3-3
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一般演題3
腹水による腹部膨満が主訴となった小腸原発びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫の一例
*西田 晋也太田 和寛岩坪 太郎川口 真平小嶋 融一竹内 利寿芥川 寛樋口 和秀
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抄録

 症例は74歳男性。歯肉癌術後、肺腺癌術後で当院通院中。1週間前からの腹部膨満と黒色便があり、当科へ紹介となった。血液検査ではHb:9.5g/dLと軽度の貧血を認めた。腹部CTで上部空腸に限局的な壁肥厚と播種を疑う大網の濃度上昇、腹膜、腸間膜の軟部結節、さらには腹水を認めた。上部消化管内視鏡検査では特に異常所見は無く、出血源は何らかの小腸悪性腫瘍であると考えられた。この時点での小腸病変の鑑別として、小腸癌、GIST、悪性リンパ腫、他臓器癌の小腸転移などが挙げられた。経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行ったところ、上部空腸に不整な潰瘍を伴った3/4周性の隆起性病変が明らかになった。内視鏡下生検により大型リンパ球様異形細胞が検出された。また、同日施行した腹水細胞診においても多数のリンパ腫細胞が検出され、フローサイトメトリーにてCD3(-)、CD19(+)、CD20(+)であり、L-λ>>L-κκ/λ比:0.00)とクロナリティを認めたことよりB細胞性リンパ腫と考えられた。以上より、小腸原発びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫と診断した。我々は腹水による腹部膨満が主訴となった小腸原発びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫を経験した。種々の小腸腫瘍が鑑別に挙がったが、症状はいずれの腫瘍に対しても非典型的であり、最終的な診断は病理組織学的所見によるものであった。腹水が症状の主体となる小腸原発びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫の報告は少ない。当院は2012年以降9例の小腸びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫を経験しており、それらの経過と若干の文献的考察も加えて報告する。

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© 2020 本論文著者
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