2005 年 46 巻 6 号 p. 246-250
1993年から2004年にかけて広島湾内の呉湾,海田湾で有毒渦鞭毛藻 Alexandrium tamarense の発生状況を調査するとともに,単離した5株ならびに垂下実験により毒化させた二枚貝の麻痺性貝毒(PSP)組成を調べた.A. tamarense の出現最高密度は呉湾では1,400細胞/mL(1997年4月),海田湾では2,500細胞/mL(1996年5月)を示し,両湾の環境が A. tamarense に対して高い増殖促進能を有することが示唆された.A. tamarense 5株は,いずれも β エピマーを54.9~73.0 mol%含んでいたが,1997年に呉湾と海田湾で分離した株の低毒性成分C2(PX2)含量はそれぞれ50.0および60.4 mol% であり,他の株に比べて高い値を示した.また,同時期に呉湾で毒化したマガキおよびムラサキイガイは,αエピマーをそれぞれ59.9および71.8 mol%,C2を7.6および1.8 mol%含むことから,二枚貝生体内におけるPSPの組成変化が示唆された.