食品衛生学雑誌
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調査・資料
重症トリカブト中毒事例とその食品衛生学的背景
数馬 恒平佐竹 元吉紺野 勝弘
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2013 年 54 巻 6 号 p. 419-425

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抄録

2012年4月7日北海道函館市で発生したトリカブト食中毒では,ゆでたトリカブトを食べた3名中2名が死亡した.現地調査により,典型的なニリンソウとの誤採集かつ誤摂取であると分かった.収集した植物試料の化学分析によると,死亡理由は致死量のアコニチン系アルカロイドの摂取と考えられる.死亡した採取者に誤採集を許した背景は,採集者がニリンソウとトリカブトの植物学的相違を知らなかったことである.しかし,採集者は山菜図鑑を所持しており,山菜図鑑にも誤採集を許さないための表現をさらに工夫する余地はある.また,採集者の判断を客観的に評価できる他者がいなかったことも大きい.花やつぼみは植物学的素養の有無を問わず誰でも分かる指標であることを考慮すると,食品衛生学的にはニリンソウ採取の解禁は花柄が出現してつぼみが観察されてからにすべきである.

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© 2013 公益社団法人 日本食品衛生学会
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