食品衛生学雑誌
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エルシニア選択分離における酵素基質培地の有用性の評価
Nguyen Khanh THUANKamrun NAHER久保 亮一谷口 隆秀林谷 秀樹
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2016 年 57 巻 5 号 p. 166-168

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抄録

代表的なエルシニアの選択分離培地として知られるCefsulodin–irgasan–novobiocin寒天培地(CIN)は,Yersinia enterocolitica血清型O3やYersinia pseudotuberculosisの一部の菌株の発育を阻害することが知られている.最近,新しいエルシニア選択培地,CHROM agar Yersinia enterocolitica (CAYe)が開発されたので,その能力についてCINと比較検討を行った.Yersinia属菌株251株(病原性Y. enterocolitica 176株,Y. pseudotuberculosis 59株,および非病原性Yersinia 16株)について,CINとCAYeでの発育を検討した.その結果,病原性Y. enterocolitica O3 104株中10株とY. pseudotuberculosis 59株以外の198菌株は,32℃ 48時間の培養で両培地に発育可能であった.いずれかの培地に発育できなかった病原性Y. enterocolitica O3 10株のうち,9株はサプリメント添加CINで,1株はサプリメント添加CAYeで発育できなかった.サプリメント添加CINに発育できなかった9株のうち,3株は,サプリメント非添加のCINでも発育できなかった.しかし,サプリメント添加CAYeで発育できなかった1株は,サプリメント非添加のCAYeでは発育可能であった.これらのことから,前者ではCINの培地成分が,後者ではCAYeのサプリメントが発育の阻害にかかわっているものと思われた.また,Y. pseudotuberculosis 59株は,サプリメント非添加のCAYeではすべて発育できた.CAYeは,コロニーの色で病原性Y. enterocoliticaを他の非病原性Yersinia属菌や他菌種から選択的に識別でき,CINと同等またはそれ以上の選択力があり,病原性Y. enterocoliticaの分離には適しているものと思われた.

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