2017 年 58 巻 2 号 p. 80-85
多くの魚にはメチル水銀が含まれるが,濃度は魚種によって異なる.そのため,魚種を選び適量を摂食することが肝要である.本研究では,妥当性を確認した分析法を用い,食品として流通していた19種(計210試料)の魚における総水銀およびメチル水銀濃度の実態を調査した.その結果,大型の捕食魚であるメカジキとクロマグロの一部試料において,総水銀とメチル水銀濃度がともに1 mg/kgを超えることが確認された.天然魚と養殖魚との濃度を比較した結果,クロマグロとブリの両魚種で,養殖魚における濃度がより低かった.魚種によらず,総水銀とメチル水銀濃度との間には正の相関があることが明らかとなり,効率的かつ見逃しのない検査には,0.3 mg/kgを閾値とする,総水銀濃度によるスクリーニングが有効と考えられた.