食品衛生学雑誌
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定性的試験データによる微生物濃度推定法の食品への適用
藤川 浩
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2019 年 60 巻 2 号 p. 16-21

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抄録

加熱加工された市販食品において微生物の汚染は一般に低い.最近,筆者は定性的微生物試験によって得られた全サンプル中の対象病原菌陽性数から,その製品中の対象微生物濃度を推定する確率的な方法を最確数法を基に開発した.しかし,この方法で推定した濃度の信用区間はまだ示されず,また実際の食品中の微生物についてこの方法の検証はまだ検討されていなかった.そこで,本研究では第一にこの方法による推定濃度の95%信用区間を確率論的に明らかにした.第二に,この推定法を用いて低濃度のSalmonellaを接種した乳幼児用粉ミルクおよび液体試料中の本菌濃度を推定した結果,その有用性を確認できた.この方法によって乳幼児用粉ミルクで7 cells/1,000 g,液体試料で2 cells/1,000 mLのような低いSalmonella濃度を推定できた.次に,この方法を適用して生食用食肉中の腸内細菌科群の推定濃度とその95%信用区間を各試験陽性数に対して示した.さらに,この方法の持つサンプルサイズ,サンプル分取量についての特性を明らかにした.この方法は今後,食品中の対象微生物濃度を推定する方法として適用できる可能性が示された.

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© 2019 公益社団法人 日本食品衛生学会
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