食品衛生学雑誌
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調査・資料
ポリ塩化ビニル製おもちゃの使用可塑剤調査(2019~2020)
阿部 裕 山口 未来片岡 洋平六鹿 元雄佐藤 恭子杉本 直樹
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2023 年 64 巻 4 号 p. 145-153

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抄録

2019~2020年に市販されていたポリ塩化ビニル(PVC)製おもちゃ220検体を対象に使用可塑剤の調査を行った.その結果,15種類の可塑剤が同定された.この内フタル酸エステル類(PAEs)は4種類であった.また,本研究では同定に至らなかったが,PAEsと推定されるこれまで検出したことのない3種類の可塑剤も検出された.軟質PVC製おもちゃ209検体ではテレフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHTP)の検出率が最も高く,指定おもちゃでは71.2%,指定おもちゃ以外では88.9%であり,過去の調査から徐々に増加している傾向がみられた.その他の特徴として,アセチルクエン酸トリブチルやアジピン酸エステル類の使用量の減少が確認された.規制対象の6種のPAEsは指定おもちゃでは引き続き使用されていなかったが,フタル酸ジイソブチルの使用が増加した.一方指定おもちゃ以外ではPAEsのうち特にフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)の検出率が約1/10に減少した.1検体あたりの使用量は5年前の調査から継続して低いレベルを維持していた.このように,現在国内で流通するPVC製おもちゃに主に使用されている可塑剤はDEHTPであり,その他の可塑剤の使用は減少していることが明らかとなった.

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© 2023 公益社団法人 日本食品衛生学会
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