食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
Print ISSN : 0015-6426
ISSN-L : 0015-6426
ノート
定量NMR法を用いたドクササコ子実体中に含有されるClitidineの定量
石田 恵崇 長岡 由香
著者情報
ジャーナル 認証あり

2024 年 65 巻 4 号 p. 84-88

詳細
抄録

ドクササコ有毒成分の1つであるクリチジンは,試薬として市販されておらず,標準品が入手困難であることから,標準品を必要としない定量NMR法について検討を行った.両法の定量値を比較するにあたり,LC-MS/MS法で用いる標準品について,定量NMR法による絶対純度の算出を行った.その結果,従来のHPLC純度と比較して10%以上低い89.8±1.5%と算出された.これは,結晶中に水を含有するためと推察され,用時絶対純度を算出して使用することが重要であると判明した.また,ドクササコ子実体の抽出液について従来法であるLC-MS/MS法と定量NMR法の2法で定量値を算出・比較したところ,定量値に大きな差はみられず,ほとんどの場合,誤差5%以内におさまることが示唆された.

加えて,定量NMR法の方が定量値のばらつきが小さいこと,測定対象物質の標準物質が不要であること,測定に要する時間が短時間で済むことなど,LC-MS/MS法に対する優位性が複数挙げられる.これらを踏まえ,突発的に発生し,結果報告までの迅速性が求められる自然毒分析において定量NMR法は非常に有用な手段であると判断した.

著者関連情報
© 2024 公益社団法人 日本食品衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top