食品衛生学雑誌
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市販動物性食品における腸球菌について
市川 忠次田口 昭
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1962 年 3 巻 2 号 p. 161-168

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抄録

われわれは市販動物性食品につき腸球菌の汚染分布の実態調査を行ない, それから得た結果を要約するとつぎのとおりである.
1. 各材料における腸球菌の陽性率は個々の差はあるが, いずれも広範囲に認められ, かつ, その汚染濃度は生肉における104~5を最高とし, 各加工品においては10~104の間に分布をみた. なおこれら加工品の原料 (すりみ) (原乳) においては100%ないしこれに近い陽性率を示し, その汚染濃度はいずれも104~5であった.
2. 同一材料における腸球菌数と, 一般生菌数および大腸菌群数とを比較した場合, 腸球菌は一般生菌数に比し1/100~1/1000にとどまり, 大腸菌群との比においては同数ないし1/10であった.
3. 生肉, 刺身その他の加工品類で小売店における二次汚染が考えられる各材料においては腸球菌, 大腸菌群ともに高率に認められたが腸球菌の陽性率は大腸菌群のそれよりも低率であった. しかし, 二次汚染のないか, あっても少ない材料 (製造後のままのスライスされない食肉加工品, 缶入り粉乳, 魚肉ソーセージ, アイスクリームなど) においてはこれと逆に腸球菌が大腸菌群より高い陽性率を示した.
4. 分難株の菌型は Str. faecalis が最も多く全株の85.61%を占め, 他の3型はいずれも4.92%以下の低率であったが不詳の一群としては6.44%が認められた.
5. 分離株218株の毒性試験の結果, マウスに毒性を示すもの9株, 子ネコに Enterotoxic の毒性を示すもの6株を認めた.
6. 分離株163株の熱抵抗性試験の結果は, 70°, 30分に耐えるものは1例もなく, すべての菌株が65°, 60分以内にとどまった.

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