食品衛生学雑誌
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ナイシンの使用によるプロセスチーズの保存性の改良に関する研究
津郷 友吉慶田 雅洋長尾 昭雄小林 良江鶴本 和子平井 京子
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1962 年 3 巻 4 号 p. 356-364

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抄録

プロセスチーズの貯蔵中の嫌気性細菌の発芽・増殖による製品の変質に対する乳酸菌から分離した特殊抗生物質ナイシンの効力を試験した.
i) 国産ゴーダ型チーズおよびチェダー型チーズを原料として使用し, Cl. perfingensまたはCl. sporogenesを添加してプロセスチーズを製造したのち, 37°において貯蔵試験を行なったが, 貯蔵中の製品の膨張による変質は認められなかった.
ii) 輸入エメンタールチーズおよびチェダーチーズを原料とし, 乳化剤はクエン酸ナトリウムを用い, 比較的低温でプロセスし, 製品のpHを6.2に調整し, 水分含量は標準としたプロセスチーズにおいては製品を同じ条件で貯蔵した場合にCl. perfingens添加区において貯蔵, 1週間目から2週間目にかけて著しい膨張がみられた。この際には酸度の低下およびpHの上昇を伴うことが特徴である.
これらを防止するにはナイシンを原料チーズ1gあたり50単位 (Reading unit) 加えれば充分であって添加量を100単位にふやしても効力はほとんど変らない. なお膨張の際にはCl. perfingensによるタンパク分解はほとんどみられなかった.
iii) 原料チーズ中に含まれる酪酸菌の発芽・増殖によるものと思われる膨張をナイシンの添加によって完全に防止することはできない.

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