食品衛生学雑誌
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アルコール水溶液の示差走査熱量計による融解サーモグラムと殺菌作用
別府 道子中島 雅子片平 理子
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1990 年 31 巻 5 号 p. 414-419_1

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抄録

脂肪族アルコール類の水溶液の熱分析を行い, 熱的挙動と殺菌力発現との相関を推察した. E. coliS. aureus に対する殺菌作用は30~40% (V/V%) のエタノールの濃度で急激に現れ, 融解サーモグラムに著しい変化が生じる濃度と一致した. プロパノール類の殺菌作用は, エタノールより強く, 融解サーモグラムの変化との関連は認められた. 4種の異性体のあるブタノールの殺菌力と融解サーモグラムとの関連は, t-ブタノールにのみエタノール類似の傾向が認められた. これらの実験結果から炭素数の少ないエタノールのようなアルコールは, -OH基の性質が相対的につよく, 水分子と会合を起こす相互作用の結果生じた水・アルコールの状態が, 一方炭素数の多いブタノール類は炭素鎖の疎水性が, 細菌への殺菌力発現に影響すると推察された.

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